ISO取得・審査対応、教育研修のコンサルタント

建設業の方の無駄な労力?

2005年以前(特に2000年以前)にISOを取得した建設業の方は、かなり無駄な労力を使っている可能性が高いと思っています。

その理由は・・・。

1990年代。まだISOの黎明期。

ISOの審査員には、まだまだ恣意的な人物が多かったと記憶しています。審査機関相互の情報の共有化や、審査員の力量の標準化などもあまり出来ておらず、個人的な見解を(まるで法的な要求事項のように)押し付ける、強引な審査員も存在しました。当時は(たぶん審査機関や国土交通省の中にも)ISOの明確な全体像と現場の具体的な要望等を把握出来ていない人々が割と沢山いたのだと思います。

手探りの適合性審査の結果として、無駄な書類、効果的でない計画や目標、形だけの会議などが増えていってしまった企業も少なくありません。審査員自体が適切な経験や力量(あるいは情報)を保持しないまま運用が進められてきたこともあり、当然ながら無駄な指摘も多かったことも否定できません。

また、基本的に日本人は真面目ですから、審査員の発する「お言葉」は金科玉条のごとく取り上げられて、実情に沿わない指摘でも(無理やり)是正させられてきてしまった、という経緯もあります。

特に顕著な傾向は、建設業の審査で現れていました。建設業はそれまで『職人の世界』であり『徒弟制度』に近い産業であったため、システムや記録に慣れていない業種でした。そこに入り込んできたISOの審査員が、(実情に合わない)不必要な要求をすることも少なからずあったのだと思います。

結果として・・・。

・ 十分詳しい「施工計画書」があるにも拘らず、別に「品質計画書」を作っている。

・ 取引業者の評価は行っているが、かたちだけで毎年全ての業者が合格である。

・ 内部監査を行っても不適合が発見されない。

・ 目標は設定するが達成の為の具体的計画はなく、年度末に結果報告するのみである。

・ 責任だけがあって権限がない。効果的な役割分担になっていない。

・ 開催するだけが目的の会議、データを分析するだけの委員会、などが存在する。

・ 二度手間になるような記録書式が多数存在する。

・ 教育は行われているが、形式だけで、実務的な教育になっていない。

・ 計測器の校正や重機の点検に(必要以上の)無駄な費用がかかっている。

・ 必要のない手順書やフロー図、QC工程表の作成を余儀なくされている。

・ 実際の文書はパソコンでデータ管理しているのに、未だに紙媒体で最新版管理や配布管理を強要されている。

などの現象を生み出してしまいました。

これらのことが全て無駄だとは言いませんが、『効率的でない』と感じている方も多いのではないでしょうか?

私たちコンサルタントでさえ10数年前は『多少効率が悪くともそうしなければ審査に通らないので仕方がない』と思っていました。建設業の皆さんが、そう信じて複雑なルールを構築せざるを得なかったのは当然だと思います。

しかし、今は違います。ISO審査も成熟してきました。組織の適切な管理のためにマネジメントシステム(ISO)を“ツールとして”使うことが優先されるようになりました。

皆さんの会社には、1年1回も開かない規定書、それがあることによって逆に縛られてしまう手順書、誰がいつ書き換えたか不明なマニュアル、過去2年以上見直しがされていない基準文書、など見当たらないでしょうか? あまり効果的でない古いルールが残っていないでしょうか?

近年のISOは、マニュアル1冊と記録書式としての日報でもあれば、それだけで十分審査に合格できるほどのシンプル化も(多少、誇大広告ですが)認められています。

重たいルール、無駄な文書類は、極力なくしていきましょう。

以上